ある男 U

Uとの関係

Uの噂を聞いた。 小学当初のころからの友だったが、あまりのワガママっぷりに頭にきて縁を切った。 それきり会っていない。
私は小学生の頃「バイキンマン」「××菌」 とバカにされていた。そんな私と友たちになろうと思うヤツは少なかった。 いちいち声をかけてきたり、友達になるやつは他に友達のいない者が多かった。 Uも典型的なワガママ金持ち息子であった。 しかもあまり怒らない人に対してだけワガママを発揮するのであった。当時おとなしかった 私が、格好の、そして数少ない遊び相手になったのだろう。

金持ち息子

これもまた、金持ち息子の典型的パタァンだが、とても物知らずだった。 高校生の頃、ゲームセンターにいってバイクレースをやろうということになった。 コインをいれてプレイを開始すると「アクセルがわかんねぇ。どうやったら進むんだよ」 と言い出した。「普通のバイクと同じだよ」と答えたら「普通っていったってわかんねぇんだよ!」 とわめきだし、挙句の果てに私の自転車をぼこぼこに蹴ってあばれまわった。 こんなわけで、Uのワガママと横暴は、年をとるにつれて収まるどころか非道くなっていったのである。

プライド

Uは、弱い人間であった。私もだいぶUに嫌気がさして縁が切れる少し前ぐらいの頃、 共通の友達の家(エンタ氏の家)でゲームかなにかをしていて、Uのワガママに頭にきてぶん殴ってやろうと思ったことがある。 友達の家で暴れるわけにもいかないので「おいU、外に出てコイよ!」といったが 出てこない。(私もやっとこの頃になって戦える人間になった)友達の家の柱につかまって、私にひたすら暴言を吐いていた。 傍から見て情けない姿であった。
今思えば、それがUにとって自分のプライドを守る精一杯の手段だったのだろう。 私のようなクソ雑魚に、ワガママで、無知識で、弱者で、見栄っ張りであることを悟られているのが悔しくてならなかったのだろう。 バイキンマンごときに勝てないどころか戦えないことが、許せなかったのだろう。

性根

こんなことを書くとUに同情しているように思われるかもしれないが、決してそんなことはない。 私が悪魔的精神にあこがれている人間だということを、忘れないで欲しい。ただの悪魔的な、冷酷でネガティブな分析である。
私はUのような人間のことを「性根の腐ったヤツ」と呼ぶことにしている。 私の分析によると、ワガママで自由奔放に育ったヤツは、何でも出来るヤツ、 元がよくてなんでも良いほうに評価されて育ったヤツ同様に「イケメン」であること多い。 おそらく苦しみのない自由な生活が精神に反映され、それが表情を作るのだろう。 天は恵まれたものにこそ寛大である。 やはりUもイケメンの部類であった。

Uの噂

そんなUの噂をこの年になって聞くことになろうとは、何かの因果であろうか。 Uはいまだに家にいて日雇いやら警備バイトやら、いわゆる フリーターをやっている。一時期バンド活動に打ち込んでいたが、それも 辞めてしまったらしい。そして女子高生の彼女がいる。 「女子高生の彼女は疲れる」といっていたらしい。

バックボーン

ヤツはイケメン。ヤツの親父は小さいながら会社の社長。 仕事だっていざとなれば親父の会社にもぐりこめば良い。親父の会社なのだから、 ヴィルメンのような惨めは受けまい。
ヤツは生まれながらに「見た目・金・運」のうちの2つを手に入れている。 2つを与えられていれば、たとえ性根の腐った性格になろうと生きるのに困らない。 努力なんてものは必要ない。U自身は、人生に不満もたくさんあるのだろうが、 所詮はイケメンの悩みであろう。

私はかなりの数の資格をとったが、Uの人生と逆転することはない。 『金・権力・女』すべてに劣って生きていくのである。 努力は無意味とは言わない。医師になったりトレーダーとして成功すれば 逆転することもできるだろう。 私がUの人生に匹敵するのは(人生の価値観は人それぞれだが、いちおう社会的面に限って)、 相当の努力を必要とするわけである。相当の努力をして、やっと同じかまだ劣る。 仮に匹敵したとしても、子供の頃の時間、暗い青春は覆ることはない。

世の中は生まれと見た目、そして運。努力はそいつらにはかなわない。これが私なりの結論である。



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